【連載】「3・11」後の日本

  • 2011/08/16(火) 17:58:51

【世日クラブ講演会】

問われる危機管理/講師に小川和久氏

 世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)は8月27日(土)、軍事アナリストでNPO法人・国際変動研究所理事長の小川和久氏を講師に「巨大地震・原子力事故と国家の危機管理」と題する講演会を開きます。
 巨大津波と原発事故を引き起こした東日本大震災は、菅政権の危機管理体制の欠如をも露呈させました。特に原発事故は今なおその収束にメドが付かず、国民生活を直撃しています。こうした非常事態への危機管理体制、政治のリーダーシップはどうあるべきか。原子力問題にも詳しい小川氏にその処方箋を語っていただきます。

【日時】
平成23年8月27日(土)14:00受付 14:30開演

【会場】
東京都文京区春日1-26-21 
    文京シビックセンター26階 スカイホール

【会費】
2,000円(会員無料)

【主催/後援】
世日クラブ/世界日報社

【連絡先】
世日クラブ事務局 柏木 
   電話03(3558)3417 
   FAX03(3558)3541



2011/07/25  1面 【連載】  「3・11」後の日本

国際変動研究所理事長・小川和久氏

陸自25万人体制が必要だ


 日本では、国家・社会の安全を図るための自衛隊、消防、警察、海上保安庁、重要インフラ産業などの組織について、その適正規模や配置がどうあるべきかとの議論が正面から行われたことはない。

そうした組織は相互に依存しており、重層的に配置されて初めて国家・国民を守ることが可能になる。日本の場合、縦割り弊害の中で税金が食い散らされているだけで、安全保障や危機管理面からの統合運用は無視されてきた。

 その中の陸上自衛隊の位置付けと重要性について、日本国民は東日本大震災から学ぶことになった。投入された10万7000人の自衛隊のうち、実に7万人が陸上自衛隊だった。

この陸上自衛隊が一定の規模を備えていないと、世界第6位の海岸線を持つ日本列島において災害出動も防衛も成り立たない。海空自衛隊の港や航空基地も無防備となり、国防どころではない…

 日本列島に必要な陸上兵力の適正規模は25万人だ。これは各国の研究機関が示している共通認識だ。陸上自衛隊の現員は14万1000人だ。この差について議論してほしい。25万が無理なら、せめて現役20万に予備役5万ぐらいの規模に持っていかないと、国防を放り出さないと巨大災害に対処できない事態が続くことになる。

 今回の復旧活動で、陸上自衛隊のトップをして「戦っている組織は違う」と言わしめたのは、仙台空港を復旧した米海兵隊の活動だ。津波による瓦礫(がれき)だらけの空港を1日で使用可能にしてしまった。

最初は国交省の大型土木機械で大きな瓦礫をのけ、特殊作戦用の輸送機から降り立った海兵隊が半日かけて手作業で滑走路半分の瓦礫を撤去した。その滑走路にブルドーザーなどを積んだ輸送機が飛来し、残り半日で空港を使えるようにした。日本的な発想だと、飛行機がパンクしないようにと小石や金属片を片付けるから、空港が使えるまでに何倍もの日数がかかってしまうだろう。

 危機管理の要諦は「拙速」である。一般的には、語感的に拙いと思われがちだが、「巧遅は拙速にしかず」という孫子の言葉が出典である。必要なことを適切なタイミングでできなければ危機管理ではない。その段階では取りこぼしがあっても、目的を達することが最優先される。残りは走りながら完成度を高めればよい。そこまでの理解が日本人にはない。

 この拙速を可能にするかどうか、緊急事態に対処できるかどうかは、優れて政治のリーダーシップに懸かっている。菅直人首相は総理大臣が自衛隊の最高指揮官だと知らなかったが、リーダーシップの点で参考にすべきは小泉純一郎首相時代の首相官邸だろう。好きか嫌いかはともかく、当時の飯島勳秘書官は首相秘書官4人、各省のエース級課長5人から成る特命チームをフルに動かし、5年半の政権維持に成功した。

 小泉内閣では、総理が実行を決断したことに対して「できません」は禁句だった。平均的な官僚は、国家の存亡が懸かった緊急事態であっても、法律や制度を盾に「できません」と動かないことが少なくない。それが小泉内閣の場合、9人の官僚は見事に迂回路を見つけてきた。

いかにエリート官僚であっても、迂回路を探るとなれば出身省庁などとの軋轢は避けられない。それでも官僚たちが動いたのは、小泉純一郎という首相は必ず骨を拾ってくれるという信頼感があったからだ。官僚が面従腹背になるのは、首相が信頼されておらず、能力もないと見なされた場合だ。

 人材について、平時型か有事型かを把握しておくことも重要となる。政治家も官僚も自衛官も、8割以上は平時型だと思うべきだ。有事にはどんな秀才であっても平時型エリートは使えない。

そこにおいて求められる首相官邸のリーダーシップとは、関係省庁の有事型の人材を直ちにピックアップして1時間以内に司令塔チームを編成できるかどうかだ。そして3時間以内に情報収集、人的資源、物的資源に関する『在庫確認』を行い、現地対策本部を立ち上げないといけない。

 いま求められているのは、3・11にできなかったことをできるようにすることだ。次なる巨大災害は待ってはくれないからだ。3・11で80点を取ることができるほどの動きをできるよう、日頃から徹底して訓練する。日本の行政には、それに耐えられるだけの能力が備わっている。それを行政に実行させるのも、時の首相のリーダーシップだ。

 原発事故でも、米国の動きは参考になる。米国はまず50マイル(80繊坊内から米国民を避難させた。50マイルというのは一定の根拠のある数字だ。今回の事故への適用が妥当かどうかは別にして、まず50マイルというマキシマムの距離に避難させ、安全とわかったら戻す。それが危機管理の基本だ。日本の場合は3舛ら始まり、徐々に避難区域を拡大していく。これは兵力の逐次投入にあたる愚策だ。兵力の集中使用と同様に考えねばならない。

 原発事故で自覚すべきは、日本は原子力先進国ではないという現実だ。原子炉などの技術は先進的だが、原子力への取り組み全体ではそうではない。だから放射線量を計測する根拠すら不確かだ。事故を前提とした取り組みもなかった。

 いま日本が突きつけられているのは、次世代エネルギーが確立されるまで、人智を尽くして原発を安全にコントロールし、段階的に脱原発を実現すべきという現実だ。しかし、政府にも電力会社にも原子力エネルギーをコントロールして安全を保とうという発想と姿勢はないと言ってよい。

 それは原子力事故に対する装備品がないことを見れば明らかだ。原発事故が起きれば、まず放射線が出ている前提で対処しなければならない。人間は近づけない。遠隔制御の消防車、フォークリフト、ロボット、情報収集ヘリなどが不可欠だ。それが存在していなかった。どう言い訳しようと、装備の不備は対策の不在を物語ってあまりある。
(聞き手=窪田伸雄)



The Sekai Nippo Co.,Ltd. 1975- Tokyo,Japan

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