沖縄問題に望む本質的議論

  • 2010/08/17(火) 21:53:41

 第92回夏の全国高校野球も11日目を迎え、沖縄の興南高校が仙台育英を下して、準々決勝にコマを進め、これでベスト8が出揃いました。
ベスト8進出高〜聖光学院(福島)・関東一(東東京)・成田(千葉)・東海大相模(神奈川)・新潟明訓(新潟)・報徳学園(兵庫)・九州学院(熊本)・興南(沖縄)

 個人的な予想としては、優勝は関東一高かなと思っておりますが、しかし、読者ということで言えば、やはり興南高校が優勝と言わざるを得ないでしょう(笑)。でもまんざらでもなさそうなので、この際、春夏連覇を達成して欲しいですね。


 それでは、本日の記事紹介です。昨日の記事になりますが、示唆に富む内容だったのでご紹介します。
2010/8/16 16面 【ビューポイント】
沖縄問題に望む本質的議論

  タブー化は思考停止に


                    沖縄大学教授 宮城 能彦

論点の蓋を開けた鳩山発言


 今年6月民主党の鳩山由紀夫首相が普天間基地移設問題を混乱させた責任をとって辞任した。普天間基地の移設先を「少なくとも県外」と発言したことは、保守側からは安易だと非難され、左翼や沖縄側からは結局実現できなかったことを責められたのである。

 鳩山前首相の発言はあまりにも軽率であったと私も思う。しかし、ここでは敢えて彼の発言や行動の評価できる部分について考えてみたい。

 そういった試みを快く思わない人々もいるかもしれない。しかし、沖縄問題について私が発言する目的は「議論できる沖縄にしたい」ということに尽きる。様々な立場や考えの人が、自分の意見を表明し議論していくことで沖縄問題への認識を高めていけたらいい…

そういう私の願いからすれば、左右両方からおびただしい非難を浴びて辞任した鳩山前首相についても、功罪両方の面から論じなければならないと思う。

 ここでの私の目的は、絶対に正しいと思っている結論を予定調和的に提示することではなく、議論のための議論でもない。それぞれがより広い視野で深い議論をするための、ささやかなたたき台になってほしい。

 多くの方が承知のように、左翼的な言説以外はなかなか掲載されず、たまに載ったかと思えば必ずその日だけが両論併記を装った形となってしまうのが沖縄の新聞である。そんな新聞をはじめとした沖縄のマス・メディアにおいて、特に沖縄戦や現在の安全保障の問題についてのタブーなき議論はまだまだ実現できそうにない。

 例えば、在沖米軍基地の存在理由を否定するためにあれだけのエネルギーと時間を使って取材しているにもかかわらず、沖縄のメディアは、沖縄への外国の侵略については、「そんなこと起こるはずがない」と一笑するレベルでしか論じない。

 また、沖縄戦における集団自決とその記述をめぐる教科書問題においては、結論ありきの杜撰な取材と記事であったことは記憶に新しい。すなわち県民を思考停止してしまうことこそが目的ではないのかとつい勘ぐってしまうほどなのである。

 それでは沖縄全体が蛸壺化し、「勝手にやってろ」と県外の人たちから見放されてしまう。あるいは「沖縄という腫れ物には触れるな」と沖縄自体がタブーとなってしまう。それだけはなんとしても避けなければならない。

 さて、鳩山前首相の功罪の「功」のひとつは、辞任演説において、対米依存の安全保障からの脱却を明言したことである。私は「最初からそれを言ってくれれば沖縄の状況が全く違ったものになった可能性があったのに」と残念であったが、最後の最後に発言したことによって、少なくとも現在の日米同盟のあり方について議論できる土台ができるかもしれない。そのことを評価したいと私は思う。

 もちろん、現在の日米同盟は理想的な状態であるという極めて親米的な方から日米同盟破棄を唱える方まで様々な考えや立場があるだろう。

 しかし、沖縄問題における最近の論調は、ほとんどが地元沖縄対日本政府対米国政府(米軍)という三角関係のもつれとしてのものであった。現在の日米同盟が鳩山前首相が言うような「依存」であるのか否か、「依存」であるとするならばそれは未来永劫に「依存」のままでよいのかといった議論ができないままであった。すなわち、日米同盟の内容や現状の議論自体がタブーであったのである。

 鳩山前首相の「功」のもう一つは、「臭いものに蓋」状態であった沖縄問題の蓋を開けたことである。それは彼の思惑を遙かにこえる結果となってしまったが、忘れられつつあった普天間移設問題を再び国政を左右する論点にまで結果として押し上げてくれたのである。

 そのことは、様々な論点をタブー化してその矛盾を沖縄に押しつけるだけで乗り切ってきた現状を打破し、日本の安全保障の問題を国民が真剣に議論しなければならない状況をつくりだす契機となるかもしれない。

 実は、それらの議論をタブーにしていては、沖縄県民が実は何に怒っているのかという「県民感情」は見えてこない。沖縄県民の、例えば県民集会に多くが集まるという行動や声は、必ずしも左翼陣営によって先導されたからだけではないのである。

 そのことを正確に理解しようとしない限り、沖縄問題の解決はあり得ず、従って日米同盟の安定もあり得ないと私は考えている。

 みやぎ・よしひこ 昭和35年、沖縄県那覇市生まれ。琉球大学、兵庫教育大学大学院卒業。現在沖縄大学教授。専攻は村落社会学、地域社会学、共同体論。主な著作は『共同店ものがたり』(監修・共著)、『共同売店−ふるさとを守る沖縄の知恵−』、『誇りある沖縄へ』(小林よしのり他と共著)など。

The Sekai Nippo Co.,Ltd. 1975- Tokyo,Japan

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