核シェアリング

  • 2009/08/18(火) 21:54:15

 2009/8/18付 世界日報12面 【ビューポイント】
究極の「核の傘」強化構想

 日米核共同管理の検討を
   外交評論家 井上 茂信


 オバマ米大統領が対日外交で最も警戒しているのは、北朝鮮や中国の核の脅威によって、日本で核武装論が高まることだ。そこで日本の核武装を阻止するための究極の「核の傘」強化策として、米専門家の間で核兵器を搭載した米海軍の艦船に日本の自衛隊員を乗り込ませて米国の核兵器を日本に共同管理(シェアリング)させるという日米2国間海上核戦力(BLF)構想が論議されている。

 日米両政府間では米国が日本に提供する「核の傘」を含めた拡大抑止(抑止力強化)に関する定期協議の初会合を9月半ば以降に開始する方向で調整が進んでいるが、同協議ではBLF構想についても突っ込んだ討議が行われることを期待したい。

 麻生首相は6月28日に東京で行われた李明博韓国大統領との日韓首脳会談の席上「北朝鮮問題が深刻化すれば、国内で核武装すべきだとの声が強まる」と述べたという。日本の核武装については北による5月の核実験後、キッシンジャー元米国務長官は日韓両国の核武装の可能性を指摘した…

中国も日韓の核武装を警戒していることは、7月末、米中の閣僚がワシントンで集まった初めての「米中戦略・経済対話」の内容を見ても明らかだ。日韓の核武装阻止は両国の最大の関心事だ。

 オバマ政権が日韓の核武装を恐れているのは、同政権が「核なき世界」の実現を対外政策の柱に掲げ、その前提として核保有国を米露中英仏の5大国に限定する核拡散防止体制を死守しようとしているためだ。

中国にとっては日本の核武装は「戦略的悪夢」だ。米国は日韓に対する米国の「核の傘」は大丈夫だと強調しているが、日韓両国の間には「東京やソウルを守るために米国はニューヨークを犠牲にするだろうか」との疑惑がある。

 日米の定期協議はこのような疑惑にこたえるためのものだ。協議では米国の「核の傘」強化のための具体策や、北の核ミサイル攻撃といった具体的な有事の際の対応などが話し合われる。

協議のために来日したカート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は日本人記者との懇談会で、日本の核武装論について「日本にとっていい考えとは思わない」と述べるとともに、米国と北大西洋条約機構(NATO)諸国との核共同管理体制(シェアリング)に関する質問に対して「すべてを詳細に話し合う用意がある」と語った。

 米、NATO諸国間の核シェアリングとはなにか。欧州では冷戦たけなわの1980年代に西欧諸国を標的としたソ連のSS20ミサイル配備に対抗して西ドイツやオランダに米国の巡航ミサイルと弾道ミサイルのパーシング?が配備されることになった。この決定がソ連にSS20の撤去を促した。米国核の導入と米国と西欧諸国との核の共同管理が米国の「核の傘」をより強固なものとした結果だ。

発射に二重拒否体制を設置


 これを日本に適用した場合どうなるか。米国の核ミサイルを日本領土に整備して、日米で共同管理し、北や中国の核への抑止力を高める構想となる。

6月に行われた日本を焦点にした米下院外交委員会のアジア太平洋・地球環境小委員会主宰の公聴会で、証言したブッシュ前政権の国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級部長だったマイケル・グリーン氏は、「SS20ミサイルに対抗して西欧諸国に米の核ミサイルが配備されたと同様の措置を日本にも考慮すべきではないか」と提案した。これが地上での日米核シェアリング案だ。

 海上での日米核シェアリング案はBLFと呼ばれる米艦搭載の核ミサイルの日米共同管理構想だ。中国の核脅威論によって日本で核武装論が高まった70年代に初めてクローズアップされた。

日本の国会で社民連の楢崎弥之助代議士が問題にしたこともある。同構想を発表したのはフレッド・グリーン米元国務次官補(元国務省情報調査局東アジア・太平洋部長)で、米外交評議会出版の著書で明らかにした。

 BLFはミサイル艦、空母、潜水艦のいずれかか、これらを組み合わせた米艦隊に日本の海上自衛隊員を同乗させ、日本側に米核戦力への一定の共同管理権を与えるというもの。

核ミサイルを発射するかどうかの決定については、日米の二重拒否権制度を設け、どちらかが拒否すれば発射できないことにし、中国など日本の自前の核武装を恐れる諸国を安心させることを狙っている。同論文はBLFの利点として、海上を基地としているので、日本本土への報復ないしは先制核攻撃を招く磁石の役割を果たすことを回避できるとして、地上での核シェアリングよりも有利であると指摘している。

 注目されるのは同論文が「われわれは同盟国は自国の通常戦力増強に力を集中し、核戦力は米国に任せておけばよいという考えを『当たり前のこと』と同盟国が受け止めると考えてはならない」として、現状では日韓の核武装は必至との考えを示唆していることだ。

このほかの核シェアリングとして日米とオーストラリアを中核とする海上の多角核戦力(MLF)構想も提案されている。非核三原則の是非がやっと問題になっている日本と比べ、米国内の「核の傘」の論議は、異次元と思えるぐらいに進んでいることを忘れてはならない。

The Sekai Nippo Co.,Ltd. 1975- Tokyo,Japan

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この記事に対するコメント

この記事は、ニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)のことですね。
核シェアリングさせてくれる方法は、ないのでしょうかね。

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